百景ロゴ

「とおくをつなぐもの」。このタイトルから、あなたはどんな情景を
イメージしただろうか？インターネットや携帯電話をベースに見知らぬ
誰かと繋がるためのサービスが次々と生み出され、その消費速度も
どんどん速まっている昨今。百景の音楽が感じさせてくれるのは、
ある種そういうものとは対極的なところにある“人肌の温かさ”の
ようなものだと思っている。
ジャム・バンドやポスト・ロック勢とも違い、3人が“うたう”ように楽器を
奏でることで生まれる、独特の日本的な温かみをもった叙情性。
インストゥルメンタルのロック・バンドは多くあれど、そういったものを
醸し出すことのできるのは彼らだけだ。　　　　　　　
                                                         ライター/ 柴 那典

CDのプレイボタンを押して約50分。さまざまな色彩が、目の前に現れ
ては消える。抜けるような青空と白い雲、子供たちの笑い声、どこか知
らない街の路地裏、かすかにゆれる美しい花・・・。まるで不思議な風
景の中お旅してゆくかのような音楽が鳴っている。
大阪出身、現在は東京に拠点を移して活動する３ピースのインストゥ
ルメンタル・ロックバンド、百景。ギター・ベース・ドラムという最小限の
編成ながら、その音には鮮やかな表現力が宿っている。柔らかなタッ
チとのびのびとしたアンサンブルで、そのバンド名の通りの様々な“風
景”を描き出す。
「アルバムを聴き終えたときに、一冊の絵本を読み終えたときの気持
ちになるような作品にしよう」－という意思のもと制作されたという今作
は、そういう彼らのオリジナリティがさらに突き詰められた一作。豊か
な楽器の響きが想像力を喚起し、様々なイマジネーションを掻き立て
るアルバムだ。
                                                         ライター/柴那典

まさにサウンドスケープの“魔術師”のような３人である。いまや、日本
のシーンにおいてもインストゥルメンタルのロック・バンドというのは決
して珍しいものではなくなってきた。それでも、百景の３人は他にはな
い独特な色を持つサウンドを鳴らしている。そのオリジナリティの秘密
は、彼らが持っている「緊張」と「ゆるさ」の絶妙なバランスにある。彼
らの編成は、ギター・ベース・ドラムという最小編成のアンサンブル。３
つの楽器は一分の隙もないアンサンブルを形作っている。が、一方
で、彼らの鳴らすメロディやフレーズはゆるやかで、どこか平和で温
かな情景を描き出すのだ。その景色が、聴き手の耳にしっとりと沁み
こんでいく。
                                                              ライター/柴那典

百景の音楽から僕が見たものは、日本の原風景的な光景だったのか
もしれない。情緒ある日本の風景美と置き去りにしてきた感性を、懐
かしさと幸福な憧れをもって感じてみたりもする。もっとも深いところに
眠っている僕達の共鳴箱が動いたとき、言葉は力をなくす。
「あの空だけがなぜ特別に美しいのだろう」幼い頃不思議に思ったそ
の答えが、今、月日を超え、百景の音楽によって呼び起こされる。
                                               Takaakira”Taka”Goto/MONO